Garmin ForeAthlete 245を使い、サブ3達成を目指してトレーニングをしている筆者がHUAWEI WATCH GT Runner を約2万円で購入しました。
GarminからHUAWEIへ本気で乗り換えるつもりで約2週間使ってわかったことを、両機種を比較しながらお伝えしていきます。
HUAWEI WATCH GT Runner をランナー目線でガチで解説している記事は少なかったので、少しは参考にしてもらえるとうれしいです。
==この記事の結論==
GPS、心拍数の精度は問題なし。ランニングウォッチとしての性能は及第点で、サブ3を目指すランナー視点でも乗り換えられると感じた。
ただし、屋外での視認性はまだ改善の余地がある。今後のアップデートに期待。
2024年1月にプーマが発売した「SOFTRIDE EASE IN(ソフトライド イーズイン)」。マラソン後のリカバリーシューズに良さそうだったので、ランナーのみなさんに共有します^^
HUAWEI WATCH GT Runnerを購入した理由
- ランニングウォッチとスマートウォッチを1つにしたかった
- Garmin一強状態の市場で競争力のある製品を見つけ出したかった
ざっくりこの2点です。
ランニングウォッチとスマートウォッチを1つにしたかった
これまでにもGarmin ForeAthlete 245を利用しつつ、たくさんのスマートウォッチやスマートバンドを試してきました。
中にはスマートウォッチとしては使い続けたい、と思えるものがあった一方で、どうしてもランニングの機能でGarminと比肩できるものに出会えませんでした。
ランニングウォッチとスマートウォッチを併用しても、結局は面倒になり、消去法でGarminを選んできた結果、今に至ります。
最近はGarminがLEDやタッチスクリーンに対応するなどスマートウォッチに近づいています。
ただガジェット好きとして、スマートウォッチ業界側からのアプローチを期待していたところ、HUAWEI WATCH GT Runnerの価格が約2万円にまで落ちていたので、購入しました。
Garmin一強状態の市場で競争力のある製品を見つけ出したかった
GARMIN(ガーミン)、POLAR(ポラール)、SUUNTO(スント)、COROS(カロス)……。ランニングウォッチメーカーにもプレイヤーが増えています。
しかし何だかんだでGarminが強い……。
さらに昨今の物価高も相まって、Garminのランニングウォッチがますます高額になりました。でも、その割にはスマートウォッチとしての進化が乏しい。
言葉を選ばずに言えば「殿様商売」とも受け取られかねません。
Garminを否定するつもりはありません。僕も大好きです。
ただ安易にGarminを選ぶのが、市場にとって本当に良いことなのか。
もっと安価で競争力のある製品をユーザーが正しく評価すれば、さらに市場は盛り上がるはず。
そんな「Garmin以外のメーカーへの応援の気持ち」も込めて、購入しました。
HUAWEI WATCH GT Runnerのスペック
スペックシートは以下のとおり。
これまで使っていたGarmin ForeAthlete 245も参考に並べておきます。
HUAWEI WATCH GT Runner | Garmin ForeAthlete 245 | |
---|---|---|
サイズ | 46.4×46.4×11mm | 42.3 x 42.3 x 12.2mm |
ケースサイズ | 46mm | 42mm |
重量 (本体のみ/バンド込み実測) | 約38.5g / 実測53.2g (バンドは純正短) | 実測25.1g / 実測38.5g (バンドは非純正) |
ディスプレイ | 1.43インチ AMOLED(有機EL) 466×465ppi | 1.2インチ MIP 240×240ppi |
本体材質 | 耐久性ポリマー | 繊維強化ポリマー |
画面材質 | ? | Corning Gorilla ガラス 3 |
メモリ | 4GB | 200時間の アクティビティ追跡データ |
ボタン | ・クラウン ・機能ボタン | ・ボタン×5 |
充電端子 | ・専用ワイヤレスケーブル | ・専用有線ケーブル |
防水 | 5 ATM (水深50m) | 5 ATM |
衛星 | GPS、BeiDou、GLONASS、 Galileo、QZSS | GPS、GLONASS、 Galileo、QZSS |
充電 | 最大5V×2A(10W) | ? |
バッテリー持続時間 | ・通常:14日 ・デュアルバンド高精度 GPSモード:20時間 | ・通常:7日 ・GPSモード:22時間 |
マイク | ◯ | ー |
スピーカー | ◯ | ◯ |
価格(Amazon参考) | 20,990円 (2023/06/22現在) | 19,800円(中古) (2023/06/24現在) |
Garmin ForeAthlete 245は中古市場でも流通しており、2023年7月現在、ざっくりHUAWEI WATCH GT Runner(新品)と同程度で購入できます。
HUAWEI WATCH GT Runnerの基本性能
今回はブラックカラーを購入。グレーよりも実勢価格が高いことから、こちらの方が人気っぽいです。
まず外観は画面の大きさが際立ちます。
ForeAthlete 245が42.3mmだったところ、GT Runner46.2mm。
ただし、厚さがForeAthlete 245よりも1mm以上薄いからか、大きさの割に存在感は感じません。
重さは本体のみ公称で約38.5g、実測53.2g(純正バンド[短])。
ForeAthlete 245から10g以上重くなっていますが、装着してその違いが分かる人は少ないでしょう。
あとForeAthlete 245と大きく違うのが5ボタンから2ボタンに減ったこと。
そのうち1つがApple Watchにも採用されている「クラウン」で、メニューをスクロールするのが、すこぶる快適です。
ディスプレイ
ディスプレイは1.43インチ AMOLED(有機EL)を搭載。最新のGarmin製品も有機ELへ移行しています。
ForeAthlete 245のような半透過メモリインピクセル(MIP)ディスプレイとは、鮮やかさが明らかに違います。
多くの文字盤からデザインを選ぶことができます。
ForeAthlete 245もConnect IQ(アプリ)で文字盤を選べましたが、MIPディスプレイに表示すると「思ってたんと違う!」感がすごかったです。これは有機ELの圧倒的なメリット。
ただ、このディスプレイの違いこそがGT Runnerの最大のデメリットと感じたのも事実です。後述します。
バッテリー
バッテリーは一切GPSを使わないと14日、GPSの連続使用は20時間持つとのこと。
ざっくり、約80分のワークアウトをした日は、24時間で25%くらいのバッテリーを消費します。だいたい3、4日に1回くらいのフル充電で運用できます。
- 睡眠測定 オン
- 血中酸素濃度常時計測 オフ
- 心拍数常時計測 オン
- ストレスモニタリング オン
- AOD(常時表示ディスプレイ) オフ
感覚的にはForeAthlete 245よりは持たないかな、という感じです。
充電は専用のマグネットケーブルを使用します。さらに、なんと、無線充電にも対応しています。
これはHUAWEIならでは。まじで最強。
防水性能
防水性能は水深50mにも耐えられる「5ATM」。ラン後に水道水でザブザブ洗っても、何ら問題ありません。
また、Apple Watchにもある排水機能も搭載されています。
HUAWEI WATCH GT Runnerのランニングウォッチとしての機能
GT Runnerではランニング以外にもたくさんのアクティビティを計測できます。
以下は「屋外ランニング」のメニューで、約1時間10分のワークアウトを行い、GT RunnerとForeAthlete 245で同時計測した測定項目の差です。
HUAWEIの項目名 Garminの項目名 | HUAWEI WATCH GT Runner | Garmin ForeAthlete 245 |
---|---|---|
合計時間 | 1:10:00 | 1:09:55 |
距離 | 15.60km (誤差-100m) | 15.70km (誤差+100m) |
平均ペース | 4’29”/km | 4’27”/km |
平均速度 | 13.37km/h | 13.5km/h |
最高速度 | 2’55”/km | 2’55”/km |
平均ケイデンス 平均ピッチ | 179歩/分 | 170spm |
最高ケイデンス 最高ピッチ | 212歩/分 | 214spm |
平均歩幅 平均ストライド | 124cm | 126cm |
歩数 | 12,547歩 | ー |
平均心拍数 | 141bpm | 141bpm |
カロリー | 608kcal | 724kcal (安静時消費カロリー 72) (運動消費カロリー 652) |
最大心拍数 | 168bpm | 171bpm |
推定発汗量 | ー | 731ml |
回復心拍数 (運動直後の 心拍数の低下) | 29回/分 | ー |
上昇した高度 | 226.8m | 224m |
下降した高度 | 220.5m | 218m |
最低高度 | -51.1m ?? | 14m |
最高高度 | 62.0m ?? | 131m |
パフォーマンス トレーニング効果 | 有酸素トレーニングストレス 3.2 無酸素トレーニングストレス <1.0 | 有酸素 3.9 無酸素 1.1 |
回復見込み時間 | 20時間 | 37時間 |
VO2MAX | 55ml/kg/分 | 69ml/kg/分 |
予測タイム | ・5km 15:46 ・10km 32:57 ・ハーフ 1:13:13 ・フル 2:35′:11 | ・5km 16:00 ・10km 33:45 ・ハーフ 1:15:02 ・フル 2:50:11 |
連携 | Stravaに対応 | Stravaに対応 |
その他確認できる項目 | ・ランニング能力指数 (持久力とテクニックの効率を 反映した包括的な指数) ・7日間のトレーニング負荷 ・トレーニング指数 (トレーニングの パフォーマンス予測) | ・トレーニングステータス (適切なトレーニング ができているか) ・7日間のトレーニング負荷 |
GT Runnerだけが測定できる項目には
- ワークアウトの歩数
- 回復心拍数
(運動直後、2分でどれだけ心拍数が低下するか) - ランニング能力指数
(持久力とテクニックの効率を反映した包括的な指数)
などがあります。こうしてみると、ランニング専用ウォッチのGarminに匹敵する項目を、高い精度で測定できていることがわかります。
「スマートウォッチ」ではなく「ランニングウォッチ」と定義できる製品だと思います。
GPS精度
GT Runnerでは5種類の衛星システムで計測できます(GPS、BeiDou、GLONASS、
Galileo、QZSS)。
ランニング開始時の捕捉スピードは確かに速いですが、ForeAthlete 245でも十分だったので、そこまで恩恵は受けられず。
肝心の測定精度ですが、個人的な環境では期待していたほどではない、という感じです。
今回、ForeAthlete 245の方が約100m長く計測されました。感覚的にはForeAthlete 245の方がより実態に近い計測ができていそうでした。
2023年3月12日の「びわ湖マラソン」の測定距離が42.53km(335mの差)だったので、精度は99.2%
ただし、測定精度は環境によって大きく異なります。
別日の測定ではGT Runner17.96kmに対して、ForeAthlete 245は17.99kmと30mの誤差でした。
心拍数の精度
結論、心拍数についてはGarminと遜色ない精度であると判断しました。
GT Runnerでは「TruSeen™ 5.0+」というモニタリングセンサーが搭載され、精度が大幅に向上しているとのことです。
HUAWEI製品の心拍数の測定精度は評価が高いため、期待していました。
以下、薄いピンクがForeAthlete 245、濃い実線がGT Runnerの測定結果です。
ForeAthlete 245の方がより細かい計測できている(ジグザグがより細かい)ようですが、GT Runnerの測定結果も概ね一致しています。
一部、40分くらいの山でForeAthlete 245の方が上がり切っていない部分があります。おそらくここは、GT Runnerの方がより正確な計測ができています。
以下は別日に17.96kmを走ったときの記録。
両モデルとも、かなり精度は近しいですね。
ちなみにGT RunnerはBluetooth接続によってハートレートセンサーと接続できるという情報があります(ANT+接続には対応していないようです)。
操作性|たまにワンクリックで一時停止できないことがある
見出しのとおり、信号待ちなどで一時停止するときに、クラウン型のボタンをクリックしても、一時停止できないことがあります。
※検証を続けた結果、画面が点灯していないと一時停止できないことがわかりました。
一時停止したいときは、手首を返す、またはワンクリックして画面を点灯させた状態でクリックをする必要があります。これはまじで改善して欲しいです。
あと、クランクボタンは縦のスクロールしかできず、横のスワイプは画面タッチが必要です。汗だくのときに画面を触ると、汚れて画面が見づらくなります。
【最大のデメリット】ディスプレイの視認性
屋外のアクティビティにおいて最も重要な要素のひとつである「視認性」は本当にストレスフルです。
これには「輝度の問題」「項目の表示の問題」の2つがあります。
輝度の問題については、
- 最大輝度かつ輝度の自動調節をオフにしておいても、ランニング中は勝手に輝度が下がる
- 斜めから見ると、点灯していないときは画面が見えない
- 手首の返し方によっては画面が点灯しないことがある
腕を振っていても、目をやるだけで画面を視認できるForeAthlete 245の方が圧倒的に見やすいです。
もう1つが画面表示の項目について。
屋外トレーニング時の表示項目は以下の設定ができます。
デフォルトページ以外は好きな項目を設定できます。
ただし、4項目では文字が小さく、3項目表示にしても画面の配分が下手くそで文字サイズが変わらず。
しかも4、3、2、1項目のページは、それぞれ1ページずつしか作れず「3、3、2、2」みたいな柔軟な設定ができません。
特に追い込み系のトレーニングをしているときに画面が見えないと、しんどいこともあって、ストレスが最高潮に達します。
ランニングウォッチとして「画面が見えない」ことは致命的です。
画面の項目表示はソフトウェアのアップデートでなんとかできそうな気もするので、切実に改善を期待したいです。
乳酸閾値(LT)の測定ができる
あと、ForeAthlete 245にない機能として「乳酸閾値心拍数」と「乳酸閾値ペース」(いわゆる「LT値」)の測定ができます。
LT値とは血液(体内)中の乳酸の濃度が急に上がり始めるポイントで、この数値を知ることで、効率の良いトレーニングが期待できます。
Garminはすべての機種でLT値を計測できるわけではありません。
その他、GT Runnerのデメリット、改善期待したいポイント
- ホーム画面で上からスワイプしたときに表示される「コントロールセンター」画面の並び順が編集できない
- 音声入力アシスタントに非対応
- ボイスメモ、音声入力で文字起こしできるメモ帳が欲しい
- iPhoneではメディアコントロールが不完全(音量調整、停止のみできる)
- Googleカレンダーの予定を確認したい
ランニングウォッチという視点でみれば、できることは多いですが、一方でApple Watchなどの「スマートウォッチ」との比較となると、やや物足りないところはあります。
Androidスマホとペアリングすると、アプリをインストールできますが、現状、使えるものがほとんどありません(アプリは一度GT Runnerにインストールすれば、iPhoneとのペアリングに戻しても、普通に使えます)。
Stravaとの連携に対応
Garminからの乗り換えで一番不安だったのが、データの管理について。
実に約6年間、Garmin Connectでランニングデータを管理してきたこともあり、それなりに抵抗がありました。ただ、
- これを機にStravaにデータを集約することにした
- Garmin Connectのデータが消えるわけではないので、将来的にGarminに戻ったとしても、再びデータを有効活用できる
この2点によって、データ管理的な視点での乗り換えのハードルは一気に下がりました。
結論。GT Runnerを使っていくことにした
約半月ほど使って、HUAWEI WATCH GT Runnerに乗り換えることにしました。
正直なところ、まだまだ改善して欲しいところもあります。ただ、逆に言えばGarminでなければいけない理由もありませんでした。
十分、Garminとも戦えます。
スマートウォッチ(ガジェット)市場側から、ランニング機能でGarminと渡り合える製品が出てきたことが、純粋にうれしいです(2021年発売ですが)。
冒頭でもお伝えしたように、ランニングウォッチ業界全体が盛り上がるためには、新しい風は必要だと思います。
新興メーカーを応援するとともに、Garminにも「やっぱ、Garminは違うわ」というところを見せて欲しいです!
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