発売から1年以上経ったいま、GoogleのTWS「Google Pixel Buds Pro」を購入しました。
マルチポイント、端末側からの上書き接続ができる他に、Android端末間の「音声の切り替え」機能にも対応しています。
日頃からMac、iPhone、iPad、Androidを併用する筆者が実際に使って感じたことを共有します。
==この記事の結論==
マルチポイント、端末側からの上書き接続をはじめ、ANCや気圧調整、会話を検知する外部音取り込みなど、機能が充実。
Apple製品ユーザーがあえて選ぶ理由はない(強いて言うなら価格)。とくにPixelスマホユーザーは将来性を含めて、選択肢に入る。
✅ Google Pixel Buds Proの長所
- 実売2万円程度の価格
- 気圧調整機能で、長時間の着用でも違和感が少ない
- スマートな会話検知機能
- Pixelスマホでの独自機能(空間オーディオ、ヘッドトラッキング)
🤔 Google Pixel Buds Proの短所
- 「音声の切り替え」(シームレスな接続切り替え)はAndroid のみに対応
- 音質については特筆すべきものがない
- 低遅延モードがない
新しいイヤホンと合わせて、ぜひ!
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Google Pixel Buds Proのスペック
タイプ | カナル型 | ANC | ◯ |
---|---|---|---|
カラー | ・Bay ・Porcelain ・Coral ・Charcoal ・Fog ・Lemongrass | 外部音取込 | ◯ |
重量 | ・片耳 約6.2g ・ケース+イヤホン 約62.4g | 装着検出 | ◯ |
連続再生 | ・単体: – 11時間(ANCオフ) – 7時間(ANCオン) ・ケース込合計: – 31時間(ANCオフ) – 20時間(ANCオフ) | 片耳 | ◯ |
充電時間 | 5分で1時間再生 | ワイヤレス 充電 | ◯ |
充電コネクタ | USB Type-C | 専用アプリ | ◯ |
防水 | ・イヤホン本体:IPX4 ・ケース:IPX2 | 低遅延 | ー |
対応 コーデック | SBC / AAC | 価格 | 19,400円 |
Bluetooth | 5.0 | その他 | ・Volume EQ ・圧力自動調整 ・空間オーディオ ・ヘッドトラッキング ・「音声の切り替え」機能 など |
スペックシートを見た段階で感じたメリデメは以下。
- メリット
多色展開
単体再生時間長め - デメリット
Bluetooth 5.0
若干重め
コーデックはSBC、AACのみ
Google Pixel Buds Pro 実機レビュー
この既視感……。
そう、ケースの外観はかつてマルチポイント界隈で一世を風靡した「Redmi Buds 3 Pro」にそっくり↓↓
本体は想像していたよりも小さかったです。
センサー面(外面)が正円なことで、よりすっきりとしたフォルムに見えます。
装着感
筐体が小さく、装着感は良い感じ。前から見た時の出っ張りは少なめですが、寝ホンとして使うには少し大きいです。
装着については、わりとすぐに収まりの良いポジションを見つけられました。
個人的には遮音性は高い方だと感じます。自分の鼓動が聞こえるくらいに、しっかりと密閉されます。静かな場所ではANCはオフでも十分です。
Pixel Buds Proには、センサーが耳内の気圧を感知して、詰まったような感覚を減圧する機能が搭載されており、ANCをオンにすると機能します(多分。そのように感じる)。
操作性
デフォルトでは以下のコマンドが割り当てられています。
基本的に左右共通です。
左 | 操作 | 右 |
---|---|---|
・再生/一時停止 ・通話応答/終話 | 1タップ | ・再生/一時停止 ・通話応答/終話 |
・曲送り ・応答拒否 | 2タップ | ・曲送り ・応答拒否 |
・曲戻し | 3タップ | ・曲戻し |
・音量+ | 前方にスワイプ | ・音量+ |
・音量- | 後方にスワイプ | ・音量- |
・ANC↔外部音取り込み | 長押し | ・ANC↔外部音取り込み |
このうち、アプリでカスタマイズできるのは「長押し」のみです。
長押しはANC切り替えの他に、Google アシスタントの呼び出しに割り当てることができます。
個人的には片耳はANC切り替え、もう片耳はアシスタント呼び出しに割り当てておくのがおすすめ。
あと、非常に珍しい操作として「前方・後方へのスワイプ」があります。めちゃくちゃ難しそうなコマンドですが、初めてでも普通に操作できました。
※端末単体の操作でペアリングモードへ移行することはできません。
また、端末単体で電源を切ることもできません。
バッテリー持続時間
公称値は以下のとおり。
- イヤホン単体:ANCオフ11時間、ANCオン7時間
- ケース込み:ANCオフ31時間、ANCオン20時間
オーディオを再生せず、ANCをオンにしただけの待機状態では、1時間で約10%の減りでした。
またANCオン、音量50%でストリーミングサービスを再生したところ、1時間で約18%の減りを記録しました。
音量の段階
- iPhone:0〜16段階(端末操作では0〜16)
- Android:0〜15段階(端末操作では0〜30)
※Xperia 5 IV
アプリ
アプリでできることは以下のとおり。
- イヤホンを探す(音を鳴らす、地図(「デバイスを探す」アプリで表示)
- タップ操作のカスタマイズ
- ANC↔オフ↔外部音取り込み
(「オフ」は削除可能) - 会話検知機能のオン・オフ
- イヤーチップのフィット感の確認
- イコライザー設定
- ヒアリングウェルネス
(聴力保護のためのアドバイス) - 装着検出オン・オフ
- ファームウェア更新
- 「音声の切り替え」機能のオン・オフ
- マルチポイント接続のオン・オフ
ちなみにGoogle Pixelスマホに接続したときは、アプリは不要で、端末のBluetooth設定からアプリと同様の設定ができました。
Google Pixel 独自機能「空間オーディオ」「ヘッドトラッキング」
Google Pixel スマホにしか表示されない設定に「空間オーディオ」と「ヘッドトラッキング」がありました。2023年1月、3月のアップデートでそれぞれ対応したようです。
- 空間オーディオ
Google Pixelで、5.1 以上の音声トラックに対応しているストリーミング プラットフォーム(YouTube、Google TV、Netflix、Disney+ など)で利用可 - ヘッドトラッキング
ドルビー オーディオまたは 5.1と表示されているコンテンツで利用可
2023年12月現在、空間オーディオを楽しめるスマホはハイエンドのGoogle Pixelシリーズのみ。「Google Pixel 7a」などのaシリーズでは利用できません。
ここはiPhone、Macなど、複数デバイスで空間オーディオに対応しているAirPodsシリーズに劣ります。
設定画面でデモ音源を視聴できました。確かに空間が圧倒的に広がり、臨場感が高まることを実感できました。
ANC(アクティブ・ノイズキャンセリング)
遮音性(パッシブ・ノイズキャンセリング)が優秀なため、静かな環境ではANCは不要です。
ANCを初めてオンにしたときはノイズが気になりましたが、知らぬ間に気にならなくなっていました。少なくとも不快なノイズではありません。
また先述のとおり、Google Pixel Buds Proには耳内の気圧を調整するセンサーが搭載されています。ANCをオンにすることで作動しているように感じます。
外部音取り込み
外部音取り込みは実用的です。
またANCオン時に発話すると、外部音取り込みに自動で切り替わり、再生しているメディアがミュートされる「会話検知機能」があります。会話検知機能は任意でオン・オフを切り替えられます。
反応は極めて正確で、デスク前でぼそっと独り言をつぶやいたり、文章の音声入力をする際にも、しっかりと外部音取り込みに切り替わります。
(音楽を聴いているときに口ずさむと、ミュートされてしまいます笑)
ちなみに会話検知は5秒くらい無言が続くと、自動で終了してANCオンに戻り、オーディオの音量も元に戻ります。こういう細かなところは、さすがGoogle。めちゃくちゃ優秀。
遅延
個人的にはYouTubeや映画など、気になるほどの遅延は感じませんでした。
動画編集の作業用に使うには、少し遅延が大きく厳しかったです。昨今は安価なTWSでも低遅延モードがあります。少し詰めの甘さを感じる部分です。
音質
以下、率直な感想です。
- 特筆すべき解像感はない。細かい音を拾い切れていないと感じることも(有線と比べ)
- 女性ボーカルの方がすっと耳に入りやすい感覚がある
- 柔らかめでまとまりを感じる
- 音場は狭いとは感じないが、広さも感じない
このイヤホンは音楽を聴き込むよりも、その利便性を目的に購入する人が大半だと思います。
そういったユーザーであれば、十分、音楽も楽しめると思います。
アプリのイコライザー設定は以下から選べます。
- 低音(強)
- 低音(ライト)
- バランス重視
- ボーカルブースト
- シャープ
- カスタマイズ
「カスタマイズ」は5種類の音域を無段階で調整できます。
また「ボリュームEQ」という珍しい機能もあります。スマホと接続した状態で音量が小さいときに低音域と高音域が自動で強調されるというもの。小さい音でも音楽を楽しめるように配慮されています。
マイクの音質は以下のとおり。
接続・マルチポイントの挙動
マルチポイント接続に関する挙動は以下のとおり。
操作 | 挙動 |
---|---|
端末側からペアリングモードへ移行 | できない ・ケースに入れ、蓋を開けた状態で蓋のボタンを長押し ※ すべての端末との接続を解除しても、 自動でペアリングモードにならない |
電源オン時の挙動 | 前回、電源をオフにしたときに接続されていた 端末(最大2台)に自動で接続 |
通信圏外に移動して接続解除 →再び通信圏内に戻ったとき | 自動で再接続される |
A再生中に停止 →続けざまにBを再生 | 端末によっては切り替えに5秒くらい時間がかかる |
A再生時にBを再生 | Bが無音で再生される。 Aを停止→Bを再生する必要がある |
A再生時にBが着信 | ※複数の挙動あり(以下、本文参照) |
A再生時にBが通知 | Aの再生は止まらず、Bの通知音は鳴らない ※アプリ、サービス、環境によって異なる |
A・B接続時に、登録済み端末C のBluetooth設定から選択 | 上書き接続に対応。 基本的にAとB、後に接続した方が解除される(当方環境) |
マルチポイント接続時のコーデック | AACでの接続を確認 (Xperia 5 IV) |
Google Pixel Buds Proは2台接続時に、3台目のBluetooth設定からの上書き接続に対応しています。
オーディオ再生時の着信は複雑で不安定?
「A再生時にBが着信」については、複数の挙動を確認できました。
- A(Mac)のボリュームが下がって、B(iPhone)が鳴動
→iPhoneで通話を始めてもMacはボリュームが下がったまま再生が続く
→終話後、Macのボリュームが元に戻る - A(Mac)の再生が止まって、B(iPhone)が鳴動
→終話後、Macの再生には自動で戻らない - A(Mac)の再生が止まって、B(Androidスマホ)が鳴動
→終話後、なぜかMacとの接続が解除されてしまっている
おそらく、仕様上、意図されているのは「2」の挙動と推測されます。
(通常、マルチポイントでは「1」のような同時出力はできないので、何かのバグっぽいです。)
また、Xで口コミを探してみると、「AndroidとMac(またはWindows)の相性が悪い」という声がちらほら見られました。
組み合わせによって、挙動が変わりそうで、実際に試してみる以外に、正確に知る術はなさそうです。
「音声の切り替え(Audio Switch)」機能
Pixel Buds Proには「音声の切り替え(Audio Switch)」機能が搭載されています。
これはざっくり、「Apple製品のAirPodsの自動切り替え」のAndroid版とも言えるもので、Android間では音声メディアを再生すると、自動でPixel Buds Proの接続先が変更されます。
例えばPixel Buds Proが「Xperia 5 IV」と接続された状態で、接続していない「Google Pixel 7(端末には登録済み)」でYouTubeを再生すると、自動で接続されて、Pixel Buds Proから出力されます。
つまり、Androidであれば、マルチポイント接続に関係なく、シームレスな接続切り替えができるということです。
ただし、「音声の切り替え」を作動させるためには、以下3つの条件を満たす必要があります。
「音声の切り替え」を作動させるための条件
- Android 8 以降を搭載し、Google Play 開発者サービスがインストールされたデバイス
- ファスト ペアリングを通じて、同じ Google アカウントに接続
- アプリから「音声の切り替え」をオンにしておく
現状「音声の切り替え」に対応しているデバイスはAndroidのみです。
AirPodsのようにスマホ(iPhone)、タブレット(iPad)、パソコン(Mac)、スマートウォッチ(Apple Watch)を縦横無尽に行き来できるわけではありません。
現状は「Androidスマホ・タブレットを複数所持して使い分けている」という、一部の人が恩恵を受けられる機能と言えそうです。
Google Pixel Buds ProとAirPods Pro(第2世代)の比較
Google Pixel Buds Pro | AirPods Pro (第2世代・USB-C) | |
---|---|---|
タイプ | カナル型 (バッズタイプ) | カナル型 (スティックタイプ) |
カラー | ・Bay ・Porcelain ・Coral ・Charcoal ・Fog ・Lemongrass | ・ホワイト |
重量 | ・片耳 約6.2g ・ケース+イヤホン 約62.4g | ・片耳 5.3g ・ケース+イヤホン 約61.4g |
連続再生 | ・単体: – 11時間(ANCオフ) – 7時間(ANCオン) ・ケース込合計: – 31時間(ANCオフ) – 20時間(ANCオフ) | ・単体:5.5時間 (空間オーディオ、ヘッドトラッキング オン) ・ケース込合計:最大30時間 |
充電時間 | ・5分で1時間再生 | ・5分で1時間再生 |
充電コネクタ | USB Type-C | USB Type-C |
防水 | ・イヤホン本体:IPX4 ・ケース:IPX2 | ・イヤホン本体:IP54 ・ケース:IP54 |
対応 コーデック | SBC / AAC | SBC / AAC |
Bluetooth | 5.0 | 5.3 |
ドライバ | 11mm径 ダイナミックドライバー | 11mm径 ダイナミックドライバー |
チップ | ー | Apple H2 |
ANC | ◯ | ◯ |
外部音取込 | ◯ | ◯ |
装着検出 | ◯ | ◯ |
片耳 | ◯ | ◯ |
ワイヤレス 充電 | ◯ | ◯ |
専用アプリ | ◯ | ー |
低遅延 | ー | ー |
価格 | 19,400円 | 38,192円 (Amazon) |
その他 | ・「音声の切り替え(Audio Switch)」 ・会話検知機能 ・Volume EQ ・圧力自動調整 ・空間オーディオ ・ヘッドトラッキング | ・自動切り替え ・適応型オーディオ (適応型ノイズコントロール、 パーソナライズされた音量、 会話感知など) ・均圧のための通気システム ・空間オーディオ ・ヘッドトラッキング |
【Google Pixel Buds Proの長所】
- 安い(実売価格はAirPods Proの半額)
- バッテリー持ちが若干良い
- Androidスマホとの親和性
【AirPods Proの長所】
- 防塵防滴性能がより高い
- Bluetoothバージョンが新しい
- Apple製品との親和性
(iPhoneだけでなく、Mac、iPad、
Apple Watchと広い)
ハード的にはAirPods Proが上回るところが多く、Google Pixel Buds Proはソフトウェアで必死に食らいついている、といったイメージでしょうか。
Google Pixel Buds ProはGoogleストア公式では28,200円ですが、Amazonでは2万円以下。AirPods Proの半額で買えます。
Pixelスマホユーザーなら間違いない。今後の連携強化に期待
AmazonならAirPods Proの約半額で購入できるGoogle Pixel Buds Pro。
ユーザーフレンドリーな操作性、圧力自動調整のANCや会話検知などは、格安なTWSとは一線を画しており、強くAirPods Proを意識していることが伺えます。
ここ1、2年で、日本でもGoogle Pixelスマホのシェアが拡大しています。Pixelユーザーかつ、音質にめちゃくちゃこだわりがあるわけではないなら、空間オーディオやヘッドトラッキングなどの特別な体験ができるPixel Buds Proは積極的な選択肢となります。
ユーザーの囲い込み的な面でも「PixelスマホユーザーにしかできないBudsの体験」は増えていくと予想されます。
一方で自分のようなMac、iPhoneなどのApple製品ユーザーが「Androidも使っているから」という理由で、Google Pixel Buds Proを選ぶ動機は弱いです。
AirPods Proを選んだ方がシンプルに便利に使えます。
これからの期待は、やはり「音声の切り替え」機能でしょうか。現状、Androidのみに対応したこの機能が、PCやタブレット、スマートウォッチといかに連携を強化していくのか。
今後も目が離せません。
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