「時間を買え」とかその類の自己啓発書だと想像していましたが、全く違いました。
星海社新書は新卒社会人の頃によく読んでいました。
「20代・30代、次世代のための教養」というのがこの新書のコンセプトです。
「会社なんかでは学べるものなんて何もないと」苦しくて、痛くて、悶々とした日々を過ごしていた自分は、こういう自己啓発書が心の支えになっていました。
今回、星海社新書を久しぶりに手にとってみて、やはり、相変わらず読みやすい新書だと感じました。
著者の藤野英人さん
「ひふみ投信」で有名なレオス・キャピタルワークスの創業者である藤野英人さんの著書です。
23年間で約5,700人の社長を取材したご経験をお持ちです。
お金について真面目に考えていない
日本人は真面目だというイメージが世界的にも浸透していて、自分たちでも自らそう思っているフシがあります。
しかし真面目の意味を履き違えていると、藤野さんは言います。
真面目とは「本気である」ことであって、言われたことを言われたとおりにすることではありません。
真面目という言葉が真面目に使われていない。
真面目の語源は「柳は緑、花は紅、真面目(しんめんもく)」という中国宋代の詩人、蘇東坡(そうとば)の詩にいきつきます。
真面目の本来の意味は「ありのままでいること、本質的であること」を指します。
そして日本人のお金に対する態度は、不真面目であるとしか言いようがないと、筆者は言います。
何も考えていないし、自分のことしか考えていない。
お金を貯め込むということは、他人を信じられないということ。日本人はお金そのものを信じてしまっています。
人間は存在するだけで社会に貢献できる
1円も稼げない赤ちゃんも、経済の主体になり得ます。
例えばベビー服産業は、赤ちゃんがいなければ成立しない産業です。同様のことはベビーカー、おむつなど様々な赤ちゃん産業で言えます。赤ちゃんが存在するだけで、お金が動いているのです。
そして、それは何も赤ちゃんだけにとどまりません。我々大人も、存在しているだけで経済を動かしています。消費活動によって、多くの働く人の生活を支えています。
「社会貢献」とは、新しい何かを作り出すことだけを指すのではありません。消費することによっても成し遂げることができるのです。
人は生きているだけで少なからず消費活動をしており、誰かの生産活動に貢献しています。このことを経済用語で「互恵関係」といいます。
まわりとの関係で私たちは生かされている。そのことを認識することが、経済を理解する上で最も重要なことだと著者は説きます。
経済とは共同体のあり方、みんなんの幸せを考えること
どのように生きたら、みんなが幸せになれるのかを考えること、それが経済の本質です。
現実はみんなが幸せになることなどできません。しかしそれを目指して努力はなされるべきです。
経済とはお金を通してみんなの幸せを考えること。
ブラック企業を生み出しているのは私たち自身
消費者は少しでも安く、いいものを買おうとします。
その結果がデフレであり、消費者がより安いものを望む限り、この状態は続きます。
そのしわ寄せは、言わずもがな労働者へと向かいます。労働者とは、私たち自身です。
従業員に過重労働を強いるブラック企業を生み出しているのは、私たち消費者自身であるという自覚を持つことが大切。
自分がステキだと思ったものを買う。すごくシンプルなことで幸せになれる
僕は昔からお金を使うことが好きではありませんでした。
買い物をしたあとに、満足できた経験が極端に少ないからです。
そしていつからか、お金なんて使わないほうがマシだ。そういう考え方が自分の中に刷り込まれてしまっていました。
しかしここで筆者の言葉が響きました。
自分がステキだと思って、多少高くてもそのものを買ったり、体験をしたりすることは、そのステキなサービスを提供している企業やお店を応援することになるということです。
自分が買い物で後悔してしまうのは、自分のことしか考えていなかったからなのかもしれません。
同じ消費活動をするにも、誰かのためになりたい、誰かを応援したいという気持ちでお金を使う方が、みんなが幸せになれるかもしれません。
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